京都工芸繊維大学分子化学系の北所健悟准教授らの研究グループは14日、全国の産学研究機関と共同研究で、インシリコ・スクリーニングから見出した抗精神病薬が黄色ブドウ球菌の病原因子を阻害するメカニズムを解明したことを公表した。研究内容は同日付で国際学術誌『Scientific Reports』にオンライン掲載された。
今回の発表ポイントは、黄色ブドウ球菌の病原因子「リパーゼ」(SAL)と抗精神病薬であるペンフルリドール(PEN)との複合体の立体構造を世界で初めて解明したことだが、これはインシリコ・スクリーニングによってPENがSALの活性を阻害することを予測したことから発見に至った。
また、宇宙空間の無重力条件下で作成した結晶を、大型放射光施設「SPring-8」を用いて測定、X線構造解析により、PENが酵素の活性部位に結合することを見出したとしている。
研究報告では、PENのようなSAL阻害剤は、既存の抗菌薬の効かないMRSA感染症や、黄色ブドウ球菌により引き起こされるアトピー性皮膚炎などの治療薬になることが期待できるとしたほか、ヒトのリパーゼへの阻害の可能性も示唆されることから、抗肥満薬への適応も期待されるとしている。