・12月22日 FDAが米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のニボルマブを迅速承認
・12月23日 米アリアド・ファーマシューティカルズ社がポナチニブを大塚製薬に導出
・1月5日 米アイシスファーマシューティカルズ社がアンチセンス薬の開発でヤンセン社と契約
・1月8日 スイスノバルティス社が米国で慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬を申請
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社 12月22日
米国食品医薬品局(FDA)は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)の「オプジーボ」(ニボルマブ)を迅速承認したと発表した。ニボルマブの適応は、抗CTLA-4抗体「エルボイ」(イピリムマブ)による治療経験があり、加えてBRAF遺伝子のV600変異陽性の場合は、BRAF阻害薬による治療経験を持つ切除不能あるいは転移性の悪性黒色腫の患者。
今回、FDAはニボルマブの腫瘍奏効率および奏効期間の長さを認めて迅速承認した。迅速承認は、奏効率(ORR)のような代替えの評価項目を用いて、重篤な疾患に対して医療ニーズを満たす結果が得られれば承認するが、市販後に比較試験のような臨床試験を行うことが引き続き要求されるという制度だ。転移性の悪性黒色腫の場合、皮膚がんの内で最も死亡率が高く、新しい治療選択肢が求められている。BMS社は承認を受けて、ニボルマブの販売を2週間以内に開始するとコメントした。
迅速承認も基になった臨床試験は、単一群の非比較試験。CheckMate-037試験の最短6カ月の延長試験によってニボルマブの投与を受けた患者の中間分析で評価された(n=120)。対象はイピリムマブによる治療経験があるか、またはBRAF遺伝子のV600変異がある場合には、BRAF阻害薬による治療経験がある後期の悪性黒色腫患者であった。患者は2週間ごとに、60分以上かけて3mg/kgのニボルマブを静脈注射された。その結果、ニボルマブは32%の奏効率を示した。その内訳は、完全寛解が3%(4/120)、部分寛解は28%(34/120)であった。これら38人の患者のうちの33人の患者(87%)が2.6カ月から10カ月という継続的な応答を示した。さらに13人の患者が6カ月以上応答を示した。ニボルマブに対する応答は、BRAF遺伝子の変異の有り無しに関わらず示された。
ニボルマブは世界に先駆けて2014年7月に国内で承認された世界初のヒトProgrammed cell death-1(PD-1)に対するヒトIgG4モノクローナル抗体。PD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との結合を阻害して、がん抗原特異的なT細胞の増殖、活性化および細胞傷害活性の増強などにより、腫瘍増殖を抑制すると考えられている。2014年9月には小野薬品工業から発売されている。抗PD-1抗体では米メルク社の「キートルーダ」(ペンブロリズマブ)が2014年9月に迅速承認されている。その用法・用量は、イピリムマブおよびBRAF V600変異陽性患者ではBRAF阻害薬による治療後に増悪した切除不能もしくは転移性の悪性黒色腫患者に対し、ペンブロリズマブは3週おきに2mg/kgされる。
アリアド社 12月23日
アリアド社は慢性骨髄性白血病(CML)治療薬として欧米で販売するポナチニブ(海外商品名は「Iclusig」)の日本・アジアにおける開発・商業化の権利を大塚製薬に譲渡すると発表した。権利譲渡の対価としてアリアド社は契約一時金として7750万ドル(約90億円)を、日本における治療抵抗性のCMLとPh+急性リンパ性白血病の承認時にはマイルストーン契約金を受け取る。国内ではフェーズⅠ/Ⅱの段階にあり、申請は2015年に行う予定。大塚製薬は承認後、販売活動を行い、売り上げを計上する。また、アジアの権利は、インドネシア、マレーシア、中国、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、タイ、ベトナムに及ぶ。
CML治療薬としてBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬の「グリベック」(イマチニブ、ノバルティス社)が米国で01年5月に、国内でも同年12月に登場し、CMLの治療効果が飛躍的に高まった。その後、第2世代のキナーゼ阻害薬に分類される「スプリセル」(ダサチニブ、BMS社)、「タシグナ」(ニロチニブ、ノバルティス社)が登場した。しかし、ダサチニブ、ニロチニブは多くのイマチニブ耐性の原因のBCR-ABL変異症例に対しても有効であるが、T315I変異に対しては無効である。T315I変異の発現は20%程度と頻度が高く、臨床上問題となっていた。
そこに登場した薬剤がポナチニブである。ポナチニブのT315I変異ABLへの50%阻害濃度はIC50=2.0nmol/mLと高い。実は、ポナチニブは変異ABLに結合できるようコンピューターで設計された化合物なのである。イソロイシン変異ABLの結合部位は天然型よりも狭い空間しかない。ニロチニブやダサチニブの構造ではイソロイシンの嵩高さが邪魔をするため結合できないのである。一方、側鎖を炭素-炭素3重結合という直線的な構造に設計されたポナチニブは、狭い空間に入り込めるためキナーゼとの結合を可能にしていることが高い親和性を持たせている。FDAは2012年12月、チロシンキナーゼ阻害薬耐性/不寛容のCMLとチロシンキナーゼ阻害薬治療耐性/不寛容のPh+急性リンパ性白血病の適応で迅速承認した。
しかし、フェーズIIであるPACE試験において、重篤動脈血栓症(心血管・脳血管・末梢血管イベント)発現率が予想よりも高かったためにアリアド社は、試験の一部とフェーズIIIのEPIC試験の中止を決定。2013年10月には米国での販促/流通を一時停止すると発表する。一方で当局の対応は早かった。11月に欧州諮問委員会(CHMP)は欧州販売継続を推奨、12月にはFDAも、ポナチニブの添付文書改訂とリスク抑制対策(REMS)を承認したことで販売再開が可能なったのである。欧米の当局の対応を見ても、ポナチニブの有用性の高さが伺える。
大塚製薬はダサチニブを販売する。同社がポナチニブの権利を獲得したことで、CMLの領域で有利な展開を図れることになったことは言うまでもない。
アイシスファーマシューティカルズと米ヤンセン バイオテック社 1月5日
アイシス社は、アンチセンスによる消化器系の自己免疫疾患の治療薬の創製を目的として、米ジョンソン・エンド・ジョンソン社傘下の米ヤンセン バイオテック社と国際的な締約の締結を発表した。契約は3つのプログラムから成る。両社は、アイシス社のアンチセンス技術および薬送達技術およびヤンセン社が持つ自己免疫病領域での創薬ノウハウとを融合して開発を行う。その中には経口投与による腸を含む局所送達型のアンチセンス薬の開発も含まれているという。
アイシス社は、ヤンセン社から3500万ドルの契約金を受け取る。この契約金には、両社が最初に臨床開発する候補の最適化のための資金が含まれている。共同開発が順調に進めば、アイシス社は成果報酬やライセンス料など総額で約8億ドルの支払いを受けることになる。また、アイシス社は、商品化に成功した全ての製品の売上高に基づいて、平均すれば2桁台になる段階的なロイヤルティー収入も得ることになる。一方でヤンセン社は、3つのプログラムから創出された製品候補を導入するオプション権を保有することになる。
アイシス社は2014年11月、英アストラゼネカ社とも戦略的な提携を発表している。アストラゼネカとの提携は、より効率的に、標的組織にアンチセンスを送達する新たな技術の開発を目的とている。両社は2012年にがん分野で共同開発とライセンスに関する契約を結んだ。2013年にはその契約範囲を拡大して、標的疾患に代謝性疾患を加えている。これまでに両社は、初のSTAT3アンチセンスであるAZD9150(ISIS-STAT3RX)の肝がんでの第Ⅰ/Ⅰb相臨床試験と、アンドロゲン受容体の発現を抑制するアンチセンスAZD5312(ISIS-ARRX)の固形がんを対象にした第Ⅰ相試験を実施している。アンチセンスは遺伝子レベルで機能し、メッセンジャーRNAに結合することで疾病に関与するたんぱく質の合成過程を阻害する核酸誘導体である。
ノバルティス社、そーせいグループ 1月8日
ノバルティス社は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬であるグリコピロニウム臭化物(NVA237)のGEM1、2試験、グリコピロニウムとマレイン酸インダカテロールの合剤(QVA149)のFLIGHT1、2、3試験において主要評価項目および副次評価項目が達成を達成したこと、その結果を基に米国において2014年第4四半期に申請したことを合わせて発表した。今回、申請されたグリコピロニウム臭化物12.5µg/マレイン酸インダカテロール27.5µgの1日2回吸入の用法·用量は、米国のみで申請された。既に承認を取得した国においては「ウルティブロ ブリーズヘラー」(グリコピロニウム臭化物50µg/インダカテロールマレイン酸塩110µg)の製品名で1日1回吸入の維持療法として販売されている。同様に1日2回吸入のグリコピロニウム臭化物12.5µgの用法・用量も米国だけで申請された。米国以外では1日1回吸入の「シーブリブリーズヘラー」(グリコピロニウム臭化物50µg)として発売されている。
グリコピロニウムは、英アラキス社と英ベクチュラ社が共同研究・開発していた化合物で、05年4月にノバルティス社に全世界における独占的開発・販売権を導出した。05年8月には現そーせいグループがアラキス社を買収したことで、グリコピロニウムの権利はそーせいグループとベクチュラ社が保有していることになっている。
今回の承認申請がFDAに受理されるとノバルティス社はそーせいグループにマイルストーン契約金を支払う。そーせいグループは「今回のマイルストーンは織り込み済みで、2015年3月期の予想業績は修正しない」としている。ただし、マイルストーン契約金の金額の開示は無い。そーせいグループの2015年3月期の予想売上収益は33億円であることから、マイルストーンの額は20億円程度と推定される。そーせいグループの1月8日の終値は4280円で前日から130円上昇。時価総額は589億円となった。そーせいグループでは米国での上市や、診断率の向上が期待される。2018年3月期以降の市場の加速度的な拡大によってロイヤリティの増加等が見込まれるとし、2018年3月期に63億円、2019年3月期には82億円、2020年3月期には139億円の売上収益を見込んでいる。(勝)