サラ・ベルナール。このフランスの大女優のことは、ミュシャのポスターでしか知りませんでした。彼女の芝居のポスターがきっかけでミュシャのシンデレラストーリーが始まったという解説は何度も目にしました。その作品「ジスモンダ」上演当時、サラはすでに51歳だったそうですが、人気は高かったということとポスターでしか彼女の顔を知らなかったのですが、今度はその彼女を紹介する展覧会があることを知り、私よりずっとフットワークの軽い友人を誘って、横須賀美術館まで観に行きました。
横須賀線で鎌倉より先に行くのは初めてで、ちょっとした日帰り旅行です。昼前に東京駅を出発して、電車を乗り継ぎ、バスに乗って到着したときにはすでに2時を回っていました。海が目の前に広がる観音崎という気持ちのいいなだらかな丘に美術館はありました。低いガラスの建物の前は芝生が広がり、その景色を眺めながら食事ができるレストランがありました。入口から奥へ空中の廊下を渡って会場入口に誘われるようになっていましたが、高所恐怖症の人は前だけをみて進むことをおすすめ。
サラの活躍した19世紀末は新しい技術がどんどん開発されていった時代なので、さすが大女優だけあって自分のアピールのため、そして記録のためにとてもたくさんの写真を残してくれています。彼女が関わった人たちの写真が観られたのはおもしろかったです。それと女優としてだけでなく、一座を率いてアメリカ、イギリスへも大興行を行うとか、普仏戦争時に劇場を病院として解放するように国や財界の支援を取り付けるなど広い人脈を生かし、多方面で活躍していた人だったようです。でも、一人息子の放蕩に手を焼いたり、晩年まで恋愛をしていた女性だったなどがわかり、興味深い内容でした。
当時の新しい芸術運動(アール・ヌーヴォー)の中心にいた彼女自身も絵や彫刻をする芸術家であったとは驚きでした。しかもかなりの腕前。
大きく近代化していた時代に生きた偉大な女性の人生が少し観れました。12月になれば渋谷の松濤美術館で観られたのですが、横須賀美術館はとても素敵で今回行けてよかったです。