『燃ゆる女の肖像』(2019・ロングラン上映中)を観て、そういえば女性アーティストの映画がいくつかあったなぁと思い出したので今回はその話。


 アーティストを主人公にした作品は数あれど、女性が主人公のはそれほど多くないかもしれませんが、どれも個性的な人物像が映し出されています。


 何と言っても一番印象に残っているのはイザベル・アジャーニの『カミーユ・クローデル』(1988)。『アデルの恋の物語』(1975)で世界的人気になった女優のおかげで彫刻家・ロダンの弟子だったカミーユ・クローデルを知り、この時代に女性の彫刻家がいたこともわかりました。その後、何度か展覧会で彼女の作品を見る機会がありましたが、美貌なうえにこんな才能があったがゆえの波乱万丈だったのかなとも思いました。同様にフリーダ・カーロと歳の離れた画家である夫のディエゴ・リベラの関係もよく似ていて、芸術家同士は時代や国が違っても激しく惹かれ合い、反発するのかもしれません。ドキュメンタリーではない『フリーダ』(2002)もあります。『アルテミシア』(1997)は女流画家として初めて後世に名を残した女性の話です。早熟な天才の少女の過酷な人生を画家として、女性として生き抜く力強さや精神力が圧巻でした。


 また、彼女たちとはまったく違う画家を描いた『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(2016)は素朴なイラストを描いた素人の女性の物語。彼女もまた別の困難を抱えて人生に翻弄されますが、絵を描くことで何とか自分の人生を生きた人でした。いずれの映画も彼女たちの作品の裏にある物語は実に興味深いですし、どれも映画としてとても面白いものばかりです。



 もうひとつおすすめなのが、杉浦日向子のマンガのアニメ化作品で、北斎の娘・お栄、のちの葛飾応為の物語『百日紅~Miss HOKUSAI~』(2015)です。実写だと視覚的な情報量過多になって、原作の主人公の気持ちを表現にくかったかもしれません。お栄の声を担当している杏がぴったりでした。近年葛飾応為はよく取り上げられていて、太田記念美術館で特別公開された作品を観たことがあります。時代の最先端をいく画風でした。



『燃ゆる女の肖像』は実在する人物の話ではありませんが、やはりこれまで実在した女流画家の存在を踏まえてのもので、時代や環境によって女であることが画家や彫刻になるのに大きな壁になっていたのがよくわかります。今最も話題になっているジェンダーギャップにつながるなと思いました。