振り返って見たら「ゴッホ」の作品もよく観に行っています。好きというのではなく、単に絵画の変遷の一部として知りたいからだと思っていましたが、彼メインの展示にも行くので、結局好きなのだろうと最近思い直しました。それにゴッホが日本に憧れ、浮世絵も多く所持し大胆な模写をしていたこともあって、日本人としてはどうあっても注目せざるを得ない存在で、たびたび展覧会があるからだと思います。
子どもの頃は「ゴッホ=ひまわり」で、バブル期には保険会社が法外な価格で落札したニュースが印象的でした。展覧会に行くようになって、彼のセンセーショナルな人生や友人関係なども知り、さらに興味が出てまた展示企画が違ったアプローチだったりするので観に行ってしまうのかもしれません。
37年という短い生涯、しかも画家としての活動は始めたのが遅いので作品数は多くないと思っていましたが、大層な早描きで、残した油絵は約860点。それ以外の水彩画、素描なども合わせると2100枚以上だそうで、たった10年ほどの画家人生にそれほど残したとは驚きです。
パリに出て印象派の影響を受け、浮世絵にも刺激され、なぜか日本のイメージを求めて移った南仏で、どんどんオランダ時代の暗い色から明るい色調へ変化していくのが、今開催中の『ゴッホ展』でよくわかります。
これまで観た『花咲くアーモンドの木の枝』『夜のカフェテラス』『自画像』などにも魅了されましたが、『星月夜』は天文学者の間では、M51銀河を描いているという論文で有名なのを先日テレビ番組で知りました。ゴッホは天文好きでもあったようで、当時の最新情報として一般的に普及していた本で渦巻銀河のイラストを見ていた可能性もあったかもしれないなんて、また新しい発見でした。
最近公開された映画『永遠の門』では、なんと63歳のウィレム・デフォーがゴッホを演じているのですが違和感なく、ゴッホ自身の視線からのシーンの演出は、観ているこっちも彼に同調して、記憶が跳んだことにパニックになる気がしました。だから自分ではどうしようもないのがわかって入院したのだろうし、絵を描く衝動もまた抑えがたいものだったのだろうと思えました。この作品で彼の死に関しての描写は興味深いものでしたが、2017年に公開された『ゴッホ 最期の手紙』ではその死をめぐるミステリーを彼の作品のモデルになった郵便配達人の息子が探っていくという面白い展開でした。しかもゴッホタッチの油絵のアニメーションという実に凝った作品で、ストーリーもさることながら画面もユニークです。
アニメですが実写映像を撮影し、それに合わせて絵に起こしているので、役者はどんな顔でもよさそうなものをちゃんと似た人を起用し、125人の画家に62,450枚の油絵を描かせたそうです。ゴッホの絵が動き、その中に入り込んだような感じがしてとても不思議な映画でした。
ラスト10年の人生が、後の人々をこんなにも刺激しているゴッホはまだまだこれからも違う面を見せてくれそうです。