デジタルアートは鑑賞と体験が同時に楽しめるのがいいです。初台にある東京オペラシティタワー4階のICCギャラリーEで開催中の『Digital×北斎【破章】北斎vs廣重〜美と技術の継承と革新』も新しい技術でこれまでにないかたちでアートを鑑賞できるものでした。
ここのところ浮世絵を見ることが増えていますが、元の色合いが変わってしまわないように照明が暗めなので、細部を見るのが難しいのは仕方のないことですが、ここのデジタルで再現された葛飾北斎『冨嶽三十六景』や歌川廣重『東海道五拾三次』は〝所蔵元認定の展示用マスターレプリカで超高精細、3次元質感画像処理技術で和紙の微細な刷りの凹凸まで現物を再現〟させたものだそうなので、版画にしか見えないのに明るい照明のもとで、人々の顔や仕草をじっくり観ることができますし、映像などで詳しく紹介された技法を拡大鏡で確認することもできました。何度も観てきた作品なのに改めて職人たちのこだわりの凄さに驚かされました。
それだけではなくVR絵画、ムービングアート、3Dダイブアートという体験できました。
ゴッホの『ローヌ川の星月夜』の星を煌めかせ、モネの『散歩、日傘をさす女』で風を起こしてスカートを動かしたり、自分が絵の中に入ったように深海に潜って、北斎のクラゲやタコにカツオが泳ぐ中で目が回りそうになり、最後は『神奈川沖浪裏』の波に翻弄されて、やがて壁の一枚の絵に戻るまでを体験したり、自分が動くことで壁の絵のサイズや、角度を変えたりすることもできておもしろかったです。
今思えば、千葉市美術館の『田中一村展』を観に行ったとき、1階でも「Digital×浮世絵』が展示されていました。あそこではここまで凝った仕掛けのはありませんでした。それにロボットの案内しかいなくて展示の趣旨をいまいちわかっていなかったうえ、すでに3つの展覧会を見た後で時間も気力もなく、さらっと見ただけだったので今回いろいろ堪能できてよかったです。
予約優先でしたが、新宿に近いのにほとんど人がいなくて、同じビルの居酒屋も気の毒になるくらいガラガラでした。なので確実に密は避けられて、今行くのにちょうどいいかもしれません。
そして、コロナウイルスのために昨年延期になった映画『HOKUSAI』がついに5月公開決定です。青年期を柳楽優弥が、老年期を田中泯が演じ、蔦屋重三郎のもと活躍していく様を描いているようです。去年から気になっていた1本なので楽しみです。
また、東京ミッドタウンで生誕260年記念企画 特別展『北斎づくし』(7/22〜9/17)があるので、今年はこれでもかというくらい北斎に出会えます。