ビデオが普及してからどんどん映画館が衰退していって、特に名画座と呼ばれる2本立てを上映する映画館がほとんどなくなってしまいました。
学生時代、少ない手持ちのお金でいかに多くの映画作品を観るかが問題だったので、この名画座の存在は大きかったです。よく行ったのがテアトル東京の地下にあったテアトル銀座、割と広かった八重洲スター座、文芸座、ル・ピリエ、高田馬場パール座、飯田橋佳作座、銀座シネパトスなどです。観たい作品のために遠くの名画座まで足を運んで、ほぼ貸し切り状態で鑑賞したこともあります。ビデオデッキは結構高かったし、レンタルビデオ店がまだなかった頃は映画館へ行くしかなかったのですが、新作のかかる封切館(古い言い回しですね)は学生料金でもそうそう行ける値段ではありませんでした。(あれ、そもそも学割設定がなかったような気が…)例えば月に何本も観たければ、最新作は数ヶ月後に2本立てで名画座にかかるまで我慢して、何なら入れ替え制ではなかったので一日中いることもできました。各館独自の組み合わせで、狙っていた作品との同時上映作品に感銘を受けたり、俳優や監督を知るということもありました。そういえば、上映の合間にチャップリンの訃報のアナウンスがあったこともありました。(調べてみたら12月25日に亡くなっていました。つまりクリスマスに一人名画座にいたということですね)
さて、それでもやっぱり話題の最新作もチェックしておきたいという場合、〝運〟を引き寄せないといけませんが試写会という手もありました。だいたいラジオで募集していたので、せっせとハガキを出し、毎月3〜5枚の試写状を当てて指定されたホールへ行ったものです。その頃の試写会では会場に貼られたポスターを上映が終わるまでには1枚づつ丸めて出口付近に置かれているのを好きに持ち帰っていいというシステムだったので、エンドロールが流れるやいなやダッシュで会場を出てもらったものです。もちろん今は場内が明るくなるまで席を立ちません。
都内の数少ない名画座の生き残りのひとつ「ギンレイホール」では、緊急事態宣言中も客席を制限して上映の合間は30分とって館内では飲み物のみ、食事は外出カードをもらって外で済ますようにしていました。高田馬場の「早稲田松竹」もこだわりの組み合わせをする名画座です。5月いっぱい閉まっていましたが、その間あらゆるところを清掃したそうなので、とてもきれいになっている空間でまた観てみたいです。
このコロナ禍で規制がかかり、制限を設けて緩和かと思いきや、休館に追い込まれ、映画館で映画を観たい者にとってまったく難儀な日々です。やっと6月から再開の発表がありましたが、またいつどうなるかわからないですね。