今年はエジプト関連の展示が3回もありました。相変わらずミイラの人気が高いようです。Bunkamuraの棺メインの『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展―美しき棺のメッセージ』には行き損ねましたが、上野の国立科学博物館で開催されている特別展『大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語』(2022/1/12まで)は、画期的な展示があります。そう、今回の目玉は最新のCTスキャンの映像です。これまでは棺の中のグルグル巻きの実物を上から見るだけでしたが、その中身をあらゆる角度から隅々までクリアに見ることができます。実物をじっくり観るのは正直ちょっと怖いので、この展示は個人的にはうれしいです。



 子どもを含む6体それぞれがブースごとに大スクリーンに映し出され、年代も異なるのでミイラの変遷を知ることもでき、護符がどの部分にあるのかもこれならよくわかります。また大切な臓器は常に専用のカノプス壺に入れられていたわけでないのも初めて知りました。理想的な人物像にした人型の棺が、やがて写実的な人物画を板に描くものになっていくとか、ミイラの製造方法などの解説もあるので初めてでもわかりやすいです。精巧なレプリカのツタンカーメン像とロゼッタ・ストーンも最後に見ることができます。


 今回の展示は新しい見方や発見があってとてもおもしろいのですが、先日見た番組でこの大英博物館に集められたコレクションの多くが、ウォーリス・バッジという人物により違法な手段で強引に入手したというのを見て、いろいろ考えさせられました。


 ロンドンでロゼッタストーンを間近に見たとき感動したものですが、こういうものの背景には暗い面が多いのもまた事実です。19世紀に陳列された古代ギリシャ彫刻は、美術史家が極彩色であったことを知りながら白だったと発表し、さらに当時の流行色であったことから残っていた色彩を洗浄していたこともあるので、帝国が持ち帰ったから今もきちんと保管されているという言い訳は成り立たないのもよくわかります。


 本来なら2021年正式に開館したエジプトの首都カイロの巨大な国立エジプト文明博物館に行って、ゆっくり見て回るのがいいのでしょう。でも申し訳ないですがヨーロッパの美術館の収蔵品だからこそ、こうして日本で鑑賞できるのがありがたいです。


 もうひとつ、以前紹介した『国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話』が八王子の東京富士美術館で1/16まで開催中です。これもまたアニメを使って、死生観などを別の角度から古代エジプトを知ることができるのでオススメです。

 ついでに、発掘にまつわる山岸凉子の『ツタンカーメン』もおすすめです。