魔術にまつわる学問
映画『ハリー・ポッターと賢者の石』の公開20周年ということで主な出演者の同窓会のような番組が話題になっていますが、たぶん公開記念に合わせた展覧会が昨年末から東京ステーションギャラリーで開催中の『ハリー・ポッターと魔法の歴史展』(3/27まで)です。でも映画絡みではなく、原作よりの展示でした。
内容を事前に確認せずに行ったのですが、なんとダヴィンチの手稿にジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの作品、一度実物を見たいと思っていたアストロラーべまであって驚きました。正直、会場に入って最初のうちはJ.K.ローリングの直筆メモやイラストレーターのジム・ケイの描くホグワーツの先生の肖像画などが続くので、映画のハリー・ポッターしか知らない原作本を読んでいない身としては、それほど興味を惹かれなかったのですが、展示構成がハリーたちの通った魔法学校の科目に沿っていて、物語にヨーロッパからイスラム圏に東洋までの錬金術・薬草学・天文学などを絡めて、昔の人々の魔法との関わりや時代背景が実にわかりやすく解説されていました。おそらく〝中世における錬金術と天文学と魔術〟というタイトルで中世の本や図などの展示だったら、マニアックな人にしか刺さらないと思います。でもこのハリー・ポッターを書いた原作者の視点を通して、自然と古文書や怪しいミイラにまつわる当時の人たちの価値観や思考を知ることができるようになっていて、こういう世界を覗いたことがない人でもすんなり入れて楽しめるこの企画を構成した学芸員はすごいと思いました。
会場の装飾はちょっとチープ感が否めませんが、魔法学校の中に来ている気になれるようかなり工夫されていましたし、映画に出てくるスニッチもいました。何より驚いたのがJ.K.ローリングの制作に関する構成のメモだけでなく、直筆のイラストが結構あり、それがとてもうまかったことです。作家は絵であらわせないから文字ですべてを表現するのだと思いましたが、彼女は自分の考え出した世界を絵でもしっかり描き出せていたのですね。〈ダイアゴン横丁の入り口のスケッチ〉などは素晴らしかったです。ただ、タイプの文字がとても小さく、直筆もかなり細かい文字で英語がわからない以前によく見えなかったです。
大人気なので事前予約制も土日は発売早々なくなる可能性大です。行ける日があったら即予約することをお薦めします。関連グッズを買うにも店の入り口でまた並ばないと行けません。ここの音声ガイドは装置をレンタルするのではなく、アプリを使う方式なので、先にダウンロードしておかないともしかしたら聴けないなんてこともあるかもしれません。入場時に絵柄の違う紙チケットをランダムにもらえます。