〝2018年10月。あなたは日本にいますか?〟
こんなキャッチコピーがドーンと書かれたフライヤーや看板が上野界隈に出現したことがあります。上野の森美術館で開催される『フェルメール展』の告知でした。
昔、通信講座の広告に使われていた『牛乳を注ぐ女』を見ても興味がなかったのですが、『羊たちの沈黙』(1991)のレスター博士が世界中のフェルメール作品を観て回るのが趣味という設定を聞いてからちょっと気になったフェルメール。
さて、彼の作品のほとんどが宗教画ではないところが日本人に受け入れやすいのか、わかりやすい画風だからか、かなりの人気者になってきて1900年代の展覧会のタイトルにはなかったフェルメールの名前が2000年以降『レンブラント、フェルメールとその時代展』(2000)、『フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展』(2007)、『フェルメールからのラブレター展』(2011)などと謳われて、注目度が上がったのがわかります。
そして、ついに冒頭のコピーが登場するまでになりました。私がこのコピー文を見たとき「確かにその通りだ」を思ったのは、ウィーンとNYそれぞれの美術館でそこが所蔵する彼の作品が出張中で観ることができなかったのに、その作品をあまり間を置かずに日本で観ることができたという経験があるからです。きっとレスター博士も本来の美術館で見損ねたのではないかと思うくらい、フェルメールは日本によく来ている気がします。フェルメールは日本で待つのが一番なのかもしれません。
数えてみたら彼の作品は35点ほどと言われていますが、24点来日中20点観ていました。たぶん一番有名な『真珠の耳飾りの少女』は3回くらい観ています。
そして今また2点来日中です。東京都美術館の『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』(4/3まで)と国立新美術館の『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』(5/30まで)。特に東京都美術館の『窓辺で手紙を読む女』は2005年に来た時には消されていた天使を観ることができます。それに全体が洗浄されて、色もずいぶんきれいになっていてビフォアアフターがわかる展示もあります。
彼の『デルフト眺望』など何点かは門外不出なので、これから先も日本では観られない作品もありますが、今後もフェルメール作品は何度も来るでしょうから日本で待っていようと思います。
関連映画でスカーレット・ヨハンソン演じる少女がモデルとしてポーズをとる『真珠の耳飾りの少女』(2003)やオランダの風俗や当時人々を熱狂の渦に巻き込んだ〝チューリップバブル〟が描かれたフェルメール作品から着想を得た小説が原作の『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』(2017)も作品の背景を知ることができるのでおすすめです。