日本に多くの西洋美術作品があるように海外の美術館も日本美術を多く所有していますが、ボストン美術館はその中でも屈指だそうです。そこの所蔵品の約5万点の浮世絵版画と約600口の刀剣コレクションから、すべて日本初出展の「武者絵」を118点、平安時代から江戸時代末期までから厳選した20口を観ることができる『THE HEROES 刀剣×浮世絵−武者たちの物語』(3/25まで)が六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されているので、ここは〝刀剣男子〟にハマって、いろいろ解説してくれる友人を誘って行ってみました。今回展示されている刀の〝兄〟にあたる刀を観に先月京都へ行ってきたという頼もしいガイドです。ちなみにその展示は北野天満宮宝物殿の特別展『両社寺の歴史と兄弟刀』(5/31まで)です。
浮世絵といえば大体役者絵や小町などの美人画を多く観てきましたが、今回は刀に合わせていわゆる武者絵を紹介するものでした。神話や武勇伝など年代順に並べて、何となく知っている物語を昔の人は、今のマンガのように楽しんできたのがわかる構成になっていました。そこでこれはいいと思ったのが絵入りの解説文を添えられていたことです。考えてみたらこれらを所有するボストン人々にはまったく馴染みのない話ですが、今の日本人でも同様によく知らない物語の内容が大まかにわかるのでありがたい工夫でした。ちょっと大変ですがひとつづつ読んだので時間がかかりましたが、大河ドラマの源平の話も取り上げられていてより作品を深く鑑賞できてよかったです。
刀も刃だけでなく、鍔に施された装飾が錦絵由来のデザインで、いかに武勇伝などに人気があったのかがよくわかります。それにしても6〜7センチ四方の中の細工の見事さには驚かされます。刀は研師が現地にいるのか、造られたばかりのように美しかったです。また錦絵の色もまるで最近刷ったかのようにほとんど色褪せしていなくて、どれだけ大切にされていたのかと思いました。
それにしてもなぜボストン美術館にこんなに日本美術が多いのかちょっと疑問だったのですが、実は幕末に日本に来ていた大森貝塚の発見者モース、東京帝国大学の教授として来日し、日本美術のコレクターになったフェノロサ、モースの来日に同行し、やはりコレクターになった医師のビゲローがみなボストン出身だったことからだったのを初めて知りました。
会場では多くの若者が熱心に鑑賞していたのが印象的でした。
森ビルではこの他に『楳図かずお大美術展』(東京シティビュー、3/25まで)『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』(森美術館、 5/29まで)も開催中です。