フランス文学者・鹿島茂さんをご存知ですか?
知る人ぞ知るコレクターで、2018年に東京都庭園美術館で開催された絵本を中心にした『鹿島茂コレクション フランス絵本の世界』に行ったとき、個人で?と思う量でした。
千代田区立日比谷図書文化館で2019年に『鹿島茂コレクション1』が開催されましたが、その第2弾『鹿島茂コレクション2「稀書探訪」の旅』(〜7/17まで、前期後期あり)が開催中です。前回観損ねたので、早速行ってきました。
ANA機内誌『翼の王国』にて連載された「稀書探訪」に取り上げられた本や新聞、資料を総覧するものでした。分厚く大判の本も多く、これを個人で買い集めたのかとただただ見入るばかりでした。
破産しかけたこともあるという本人のコメントもあるので、この収集という行為は、闇雲に集めているわけではなく、必然があって魅惑的なもの(この場合本類)がコレクターの前に次々と出現してやめることが不可能だったのだなと思いました。好きな〝それ〟は、数ある中から光り輝いて目に飛び込んで来るし、好きだと公言していると周囲の人々もこれは彼に教えなければいけないという気になっていくという現象が起こるのでしょう。それらを収集するために仕事にしていったという記述がありましたが、自分の中にいるAとBという相反する考えの人格がいて、収集したい衝動に駆られたら、それを手にしないという選択肢のないBが行動してしまい、Aが必死で稼ぐことになってしまうので、もはやそれを振り払うなんてことはできないのがよくわかりました。
これはコレクターの覚悟が垣間見られる展覧会です。本人は苦しみと同時に喜びを味わうというわけですが、おかげでこの展覧会のようなかたちでコレクターになれなかった人々は苦しみを味わわずに、つかの間収集家気分になれます。しかもこの展覧会は予約なしで観覧料300円という太っ腹な値段設定。おまけにここでもらえる展示目録が豪華です。
鹿島さんつながりでもう一ヵ所おすすめが〝世界一の本の街・神保町で共同書店はじめました〟というキャッチフレーズの本屋「PASSAGE」です。神保町すずらん通りの以前紙の専門店だったところに最近オープンしたのですが、鹿島さんプロデュースでパリのアーケード商店街「パサージュ」をイメージした内装のひと棚づつ店主がいる「共同型」の書店です。他の古書店とはちょっと違ったコンセプトで、のぞいて見るだけで気分の上がる空間です。どんどん書店がなくなり、三省堂本店もいま改装のため淡路町のあたりに仮店舗で営業しているそうで、ちょっと寂しくなっている本の街・神保町も何とか、人も流れが途切れないといいなと思います。そういえば、先日テレビで夜にはバーをオープンするという神保町の絵本専門店があって、店主の絵本の読み聞かせを聞きながら一杯飲むことのできるユニークなお店が紹介されました。一度行ってみたいですね。