決定してから終わるまで様々な問題が持ち上がって、その度にニュースになって何とか終了した東京オリンピック。木組みの技術を用いて建てられた国立競技場は、実は作業員が大変な思いをしたようです。建物は日本中の木材を使ったことでも話題になりましたが、設計した隈研吾の近年の作品はこういう木を使ったものが多く、たまたま行く機会があった九州の太宰府天満宮の町の木組みを使ったカフェもなかなかユニークで、ちょっとびっくりする空間でした。
この傾向は彼だけでなく、木材を使うのが最近の建築のトレンドになっているそうで、サビなどの心配もなく地震の多い日本では釘でガッチリとめるより動きが出てるし、柔軟な木組みの方が耐震的にもいいのでしょう。その〝木組み〟は、できあがってしまったらほとんど近くで見ることができないですが、それをタイトルどおりバラしてあるので見ることができる展示『木組 分解してみました』が2021年に国立科学博物館で開催されました。
技法の〝継手・仕口〟の複雑な形を見ると、どうやってこんな仕組みを考え、こんなに美しい形に切り出せたのかと実物を前にしても不思議です。これは日本が世界に誇る技術だと思っていましたが、西洋の曲線の木組みという日本では見ない作品が展示されていて、どこの国でも極められた職人技は、とても美しくて魅力があるのもだと思いました。
展覧会では大きな柱の複雑な木組みや錦帯橋の仕組みも近くでじっくり観察することができましたし、〝組子〟のパーツ作りから紹介する映像では、作業のための多くの専用の道具を使ってまるでパズルのように成形した木片をひとつづつ嵌め込んでいく気の遠くなるような繊細な作業を淡々とこなしていく様子も観れておもしろかったです。余談ですが、会場の入口を見下ろす2階の回廊の大理石の手摺りに〝石組み(?)〟を発見しました。
さて、この木組みを実際に触ることもできる場所があります。西早稲田の小さなビルの中にある〝木組み博物館〟で、平日だけ開館なのですが無料で見学できます。どれでも触って試せるので小さな星のような木組みをちょっと少し動かしたら、一気にバラバラになってびっくり。だいぶすり減っているからはずれやすいのだと係の人が組立て直しながら、仕組みを解説してくれました。気軽に係の方がレクチャーしてくれ、質問にも快く答えてくれました。高台にあるの石段を登ってみるまでわかりませんでしたが、隣接した穴八幡宮に行くと実物大の木組みの凄さが楽しめます。緑に囲まれたかなり大きな社で街中なのを忘れてのんびりできる散歩におすすめのエリアでした。