完全に混同していました。泉屋博古館と大倉集古館。


 入手したフライヤーをチラッと見て、最近あの堅牢な建物を曳家したという大倉集古館に「久しぶりに行ってみるかな」と思い立ち、以前どのルートで行ったかも忘れたのでネット検索。結果、降りたことのない神谷町駅から行くことにしました。

 ホームの地図でまず出口を確認し、なおかつスマホの画面ではいつも方向がわからなくなるので、改札口近くに置かれたフリーマップをもらって地上へ。この時点でも2つの美術館の違いを認識しないまま、あちこち工事中だなとか、六本木に森か?森ビルじゃなく?と思えるような高層マンションの間をキョロキョロしながら向かいました。


 スウェーデン大使館やメキシコ大使館などもあって、自分とは接点のない世界の人の居住エリアだななどとを考えながら、かなりの勾配の坂を登った先に平屋の洒落た美術館がありました。確かに目当ての展覧会はそこなのですが、よく見たら泉屋博古館。(この時点で泉屋〝集古〟館だと思い込んでいました)あれ、名前が変わった?そもそも蔵みたいな建物じゃない。まあ、何はともあれ中へ。

 開催されているのは『泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅱ 光陰礼讃―モネからはじまる住友洋画コレクション』(7/31まで)です。ここは住友家第15代当主・住友吉左衞門友純(春翠)が始めた洋画コレクションがもとだそうです。ギャラリーの最後の部屋には空襲で焼けてしまった須磨別邸の模型とそこに飾られた多くの絵画の配置を示した写真や図があり、その豪華さに驚きました。最近は黒田清輝や岸田劉生などの有名どころの周辺にいた様々な画家の作品を観る機会が増えて、渡辺省亭とか小村雪岱とか覚えたのですが、ここでまだ多くの画家がフランス留学してモネなどに師事していたのを知りました。



 今は注目されていない画家たちですが、簡単に書かれた紹介を読むとこの人もあの画家と同じ画塾だったのかとか、ちょっと当時を妄想できておもしろかったです。展示の〝スライドレクチャー「詳しすぎる作品解説」〟というのを定員制でやっているので、金曜日にすれば良かったと思いました。


 ところで、勘違いしていた大倉集古館はここから3分ほどのところで、アメリカ大使館の向かいです。こちらも実業家・大倉喜八郎が自邸で始めた美術館が前身です。今『芭蕉布-人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事-』(7/31まで)を開催中です。どちらも一般1000円で鑑賞できます。それにしても春翠はコレクションのために画家をパリへ全額負担で送り出し、勉強の傍ら絵画の購入をさせていたとは。倉敷の大原美術館の大原孫三郎も同様のことをしていましたが、明治の頃はそういう実業家が何人もいたのがすごいですね。おかげでいろんな作品を気軽に楽しめるのはありがたいです。