相変わらず森美術館は高い!地上52階なのはいいですがチケット代は大抵2000円以上です。しかもコンビニで前売券を発券するとさらに手数料も発生します。最近は前売券と当日券は同料金というのが大半なっているのに実質前売券の方が高いという何とも納得がいかない料金設定で、オリジナルデザインの券もないし、出展目録もなかったですね。あの高い料金は場所代でしょうか。ちなみに今なら当日券余裕で買えそうです。


 それともうひとつ不満なのが、ビルの構造がわかりにくことです。タワービルに直接入っていくのではなく、隣の建物から通路を渡るルートが一般的なのですが、雨の日には傘をささず行けないのか案内図を見てもさっぱりわからず、インフォメーションでエスカレーターでひとつ上の階で右手に進めばいいと言われても店舗が並ぶ内部の構造のせいで、結局ウロウロ迷ってすぐには辿り着けませんでした。でもそれは今回行った『特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―』(10/10まで)にはピッタリの前振りだったのかもしれませんが、やっぱりちょっといらつきます。



 さて、この〝アリス〟というキーワードは世界中の人がルイス・キャロル原作の主人公を連想するほどの最強のアイコンです。(日本人の場合、一部男性3人組を思い浮かべるかもしれません)『不思議の国のアリス』(1865年)と『鏡の国のアリス』(1871年)はこれまで絶版になったことがないという出版業界が羨む作品です。テニスンの挿絵のアリスから始まって、やがて様々なメディアでアリスが生まれ、影響していったのがわかる展示でした。


 キャロルが話を書くきっかけは知っていましたが、本にするため挿絵家と細かく打ち合わせして、絵が浮かばないとテニスンに言われて削除したエピソードがあるとか、テニスンと共に本の品質向上のためにより良い印刷技術を求めていたなど、初めて知ることが多かったです。


 最も驚いたのが完全なオタク体質の引きこもりがち数学者だと思っていたキャロルが、当時の最新技術であったカメラを駆使して、ラファエル前派のミレーやロセッティなど著名人と知り合うことに余念のなかったライオンハンター(有名人を追いかけ回す人)であったということ。ずいぶん彼についてのイメージが変わりました。また彼が創作したアリスは早いうちからメディアミックスな展開がされ、舞台にサイレント映画、それにキャラクター商品までなっていたのにも驚きました。やがて世界に広まるにつれて様々な解釈がされて人々を虜にし続けているのがよくわかる展示でした。



 私の初めてのアリスとの出会いはディズニーのアニメ映画ですが、日本でも70年代にブームになってサブカルチャーの世界を席巻したアリス。その頃テニスンの挿絵に魅了されて入手したアリスの料理本を持っています。とりあえず何でもアリスに絡めていたのですね。もちろんティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』 (2010年)、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』 (2016年)も劇場で観ました。これからもどんなアリスが現れるのか楽しみです。