パッと見、ヘタウマなゆる〜い画風の仙崖はここのところ、よく展覧会が開催されている気がします。
出光美術館で開催中の『仙厓のすべて』(10/16まで)はタイトルにあるようにそのゆるい画だけでなく、初期の作品から愛用した品まで展示されていて、点数が多くとても見応えがありました。
うっかり何も確認せずに行ったら、ここはしっかり事前予約制で、その場でQRコード読み込んで申し込むことになりましたが運よく空きがあり、すぐに入場できました。係の人が空いていないかもと言っているくらい平日でも会期終了が近いので混んでいるようです。全部の作品に解説があるので、ゆっくり観ていたら半分あたりであと30分で閉館ですという館内放送があり、すでに1時間経っていたことに驚いて焦りました。16時までとちょっと他より時間が短いです。
ポスターに使われている有名な〝指月布袋画賛〟も解説のおかげでちょっと〝禅〟を知ることができますが、これをみて楽しい気分になれるだけで十分な気がしました。
この雰囲気から連想したのが私のお気に入りのマンガ家・坂田靖子の主に東洋を舞台にした短編です。(そもそも長編はほとんどないですが)禅画でよくある〝寒山拾得〟というのを最初に知ったのは坂田靖子の〝謹賀新年〟という作品でした。それに出て来るのは可愛らしい寒山拾得だったので、日本画で初めて見たときは正直鬼かと思い怖かったです。仙崖のそれはそれほどでもないです。
誰でも描けそうだけど、そうはいかない作風とそこに込められたものが仙崖と坂田靖子は、あくまで個人的な意見ですが共通している気がします。
もちろん仏教について描かれているわけではありませんが、『塔にふる雪』という作品では、寺に捨てられていた赤ん坊を仕方なしに面倒をみる修行中の僧侶の心情と最後のシーンから受ける切なくも暖かな何とも言えない余韻がよくて何度も読み返しています。他にも善人とは言いがたい男とか、無意識にまわりを振り回してしまうけど憎めない呑気者など、とぼけた絵柄の登場人物たちのちょっとしたエピソードが意外にグッときたり、クスッとするだけだったり、古い作品ですが少女マンガというカテゴリーを超えているので今読んでも十分楽しめます。特にアジアを舞台にした短編集がおすすめです。
両者ともゆるさの向こうにある何を感じられるのがおもしろいです。