ちょっと異色な少女マンガ家の展覧会が今、東京大学に隣接した住宅地にひっそりとある文京区の弥生美術館で開催されています。
『線と言葉・楠本まきの仕事』展(弥生美術館 12/25まで)いつも曲がるところを間違えていたのですが、ここのところ何度か訪れているので、今回は迷うことなく友人を案内することができました。
この展覧会は昨年夏、京都国際マンガミュージアムで開催されて京都まで行かないと観れないのかと思っていましたがありがたいことに東京に巡回。楠本ファンの友人を誘って行ってきました。楠本作品はちょっとマニアックで、何となく手を出していなかったのですが、最近出版された新装版を入手しました。神経質な細い線とイラストのような構成の画面の緊張感がおもしろいです。内容はまあ、それぞれが解釈して楽しむという感じです。抑揚のない線は製図用のロットリングペンで描かれているのを今回展示で知って納得しました。今どきのマンガ家はパソコンで描くようですが、昔はGペンや丸ペンを使い分けて線に抑揚を持たせて描かれるものでしたが、ほとんどの作品が単一の線で描かれ、登場人物はちょっとイラスト寄りで、あまり生命力がないというか少しアンドロイド的なので、王道の少女マンガとは別次元の世界が展開しています。あまり一般的に知れ渡ってはいないですが、海外でも翻訳されカルト的に人気があるようです。人気が出た頃の日本はまさにバブル期。マンガ業界もメディアミックス化が進み、当時販売されたLPレコードや一種のアニメですが、彼女の原画を使った動画のビデオも展示されていました。
もう一人、まったくタイプの違う画風のこちらはイラストレーターですが、マンガの要素も取り入れたイラスト集『RONDO』を出版したマツオヒロミも紹介したいと思います。いかにも少女マンガテイストなのですが郷愁を感じさせ、古臭さくない異次元な大正時代あたりを描いているのところが気に入っています。この最新画集は架空のファッション雑誌の100年を想定していて、とても凝った編集で素晴らしいです。GIZA SIXの蔦屋書店で刊行記念フェア(23年1/31まで)をやっています。よかったら手に取ってみてください。そういえば、マツオヒロミが楠本まきに憧れていたそうで、最近SNSで2人のやりとりが発信されていました。好きな作家さんがつながっているのをリアタイで知ることができる時代なんですね。