以前ワンコインで観ることができるギャラリーとして紹介した丸紅ギャラリー。ここは他の美術館と違って日曜・祝日が休館日なので、ちょっと行きづらいかもしれませんが、竹橋駅からすぐで日時指定もなく、適度な広さなので気軽に寄れます。
1/31まで開催しているのは『ボッティチェリ特別展 美しきシモネッタ』。絵画1点の展示です。
普段2000円超えるチケットにちょっと閉口するのに、たった1枚の展示にあまりためらいがないのは〝ワンコイン〟の響きのせいなのか、人気のカフェのコーヒー1杯より安いからなのか。
この作品は丸紅コレクションのひとつで日本にある唯一のボッティチェリ作品だそうです。会場にポツンと飾られているのだろうなと思って行ったのですが、まずこの作品のこれまでの変遷が詳しくパネルで紹介され、向かい側には描かれた女性―23歳で肺結核で死去したシモネッタについて、彼女を取り巻く人々のエピソードなどを交えて説明されていました。こうして作品の経歴を知るというのは作品の背後の歴史や国の情勢、人々の思惑などが見えて当時の様子を想像できるのがいいですね。もちろん、それだけ語るものを持った作品だからでしょうが。
『美しきシモネッタ』は描かれたイタリアを離れ、最初に所有したのがフランスの画商でした。
彼はマリー・アントワネットお気に入りの女流画家の夫、ルブラン氏だそうです。そしてイギリスからドイツ、戦後再びイギリスへ戻り、1969年に日本へ。当初英国フェアのために貸し出しを申し出たのが断わられたので、その場で購入を決めて日本に来ることになったそうです。
ところがその後、贋作騒ぎが起こり世間を賑わせたそうですが、無事本物の鑑定がされたという経緯がパネルなどで解説されていました。
ボッティチェリはシモネッタを他の作品にも描いているそうで、実際メディチ家の野外祝宴舞踏で披露された三美神の一人として踊ったのを見ていたことから、あの『春 プリマヴェーラ』の中で踊る三美神の一人として、彼女が亡くなったあと描いたらしいです。
ダ・ヴィンチや他の画家も彼女を描くほどシモネッタは今で言う時代のアイコンだったというのも知りました。保存状態もよく、とても細かいところまで美しいです。思ったより大きなサイズでしたが、とんでもなく大きな幕にプリントされたシモネッタを1階中央の受付横で見ることができます。
横には警備ロボットという組み合わせがユニークでした。たった1枚をこれだけいろんな角度から鑑賞できるという体験も楽しいです。平日でも多くの人が来ていました。