世界中で本離れが進み始めた頃に登場して大ヒットしたハリー・ポッターのシリーズですが、どうも手にする気になれなかったのは、多過ぎる登場人物や現象に想像力が追いつきそうもなかったからですが、その苦労をせずに済む映画は毎回公開時に観に行きました。


 暗い映画館の中で観るハリーたちを取り巻く世界は、とんでもなく進化した映像のおかげで実際にあるのではないかと思うほどでした。


 それがついに目の前で現実に見られる日が来ようとは! そう舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』です。いや、本当に魔法が存在するかのような展開は一種のマジックなのはわかっているのですが、役者たちの軽やかで素早い動きや舞台装置で、もうそうとしか見えませんでした。この演出家が魔法使いなのかもしれません。



 舞台という限られた空間で繰り広げられるハリー・ポッターの魔法世界を、ぜひとも観たいと昨夏の公演日をなんとか取ったのに演者がコロナで中止。やっと今年観に行くことができました。


 ひとつの箱が椅子にも船にもなる舞台鑑賞には観客の想像力も必要ですが、魔法を表現するのにあからさまにピアノ線とか仕掛けが見えたらさすがに興醒めだろうなと思っていました。ところが、「えっ?実はみんな魔法使える?」という場面が何度もあって目が離せませんでした。マジックショーと違って、物語の魔法世界に観客も居合わせていると思わせる演出が素晴らしかったです。


 映画最終話でハリーの息子がホグワーツへ向かった後の話で、全作品を知らなくても十分ついていけます。また日本人なのに映画の役者に似ている登場人物が何人もいて混乱しそうだったし、あるキャラクターの登場にはかなり驚かされました。


 今年の夏にとしまえんの跡地にオープンするというハリー・ポッターの体験型施設「スタジオツアー東京」にはいつか絶対行きたいです。


 ところで実写映画化されたファンタジー作品のはいくつもありますが、他に完結編まで製作されたのは『ロード・オブ・リング』くらいでしょうか。最初は壮大なアニメ作品『指輪物語』として日本公開でもされましたが、あまりにも手間がかかって続編は作られませんでした。この原作も1冊目で挫折したので、映像技術の向上によって実写版が公開されたときはうれしかったし、立て続けに公開されたのもよかったです。いまだ完結していない映画版『ナルニア国物語』は3作品だけ公開されましたが、興行的に芳しくなかったからか続編はいつになるか今のところ不明。この原作は子供の頃全読破して文庫版を大人買いしたくらいなので残念です。もうひとつ原作が大人気で豪華俳優陣が出演した『ライラの冒険 黄金の羅針盤』(2007)はアメリカのカトリック系団体の批判によって続編を断念。ファンタジーという設定で宗教問題を絡らめるのは正直わからないです。これは配信ドラマが作られているそうですが、映画の続編で観たかったです。



 やはり映画館という空間がこれらの世界に自分も入っているような気にさせてくれるのがいいですが、この今時の進化した舞台というのもいいですね。