モノトーンのその作品は、ほとんどがハガキ大かその半分の小さなサイズですが、こんなに細い線が引けるペンがあるのかと思うくらい密な画風です。


 絵本作家エドワード・ゴーリーの作品は一般的にイメージする〝絵本〟とはまったく違うので何も知らずにページをめくったら、ちょっとびっくりしてしまうと思いますが、世界中で人気があるようです。私自身は彼の描いた得体の知れないものを何となく目にしたくらいで、これまで手にしたことがありませんでした。なので、今回は思い切ってちょっと気になる彼の作品展『エドワード・ゴーリーを巡る旅』(〜6/11)をやっているという松濤美術館に渋谷区民の友人を誘ってGW真っ只中に行ってみました。



 さて、着いてみたらいつ行っても空いている美術館にチケット購入の列ができているくらい大盛況でした。たいてい地味目な展覧会なので観客は多くないだろうと油断していました。大半が20〜30代の若者で、ここの観客層としては意外な気がしましたが、やはりゴーリー人気は侮れません。


 ブラック・ユーモアが散りばめられ、途中どんな困難が描かれていようと最後は何かしら報われるという絵本のセオリーをすべて裏切って、最後まで救われない子どもの話や奇妙な空間での得体のしれないモノたちの不思議な行動だったり、一筋縄ではいかない展開と不穏さが満載の作品に魅了される人がいかに多いのかがわかります。あのヒグチユウコにも通じる魅力で人々―主に若者たちを惹きつけるのかもしれません。


 ここで初めて知ったのですが、ニューヨーク・シティ・バレエに通いつめてバレエを主題にした絵本も生み出し、ミュージカル『ドラキュラ』の総合デザインを任され、トニー賞で衣装デザイン賞を受賞したこともあるそうです。またイギリスのミステリードラマのオープニング・アニメーションも手掛け、ひたすら緻密な暗い絵本を黙々と制作している作家という私の勝手なイメージが覆されました。


 青年時代にルイス・キャロルにも影響を与えたイギリスの詩人で画家のエドワード・リアに多大な影響を受けたそうです。これらのイメージはあのティム・バートンも連想させるのになぜもっと前からゴーリーに目を向けなかったのかと思いました。でも、やっぱり展示を観ると彼の絵本を持つのはちょっと怖いです。


 少しダークな世界に浸り過ぎた後、お天気ならすぐ近くにある渋谷区立鍋島松濤公園に寄ってみてください。ここで元気に楽しそうに遊ぶ子どもたちの賑わいを見ることができます。


 最寄りの神泉駅からのルートは毎回迷いながらになってしまう松濤美術館は事前予約制ではないし、60歳以上とさらに渋谷区民は割引があります。