現代において巨匠と呼ばれるピカソたちと親しく交流した画商が築き上げたコレクションが元になっているベルリン国立ベルクグリューン美術館というのを初めて知ったのですが、1/22まで国立西洋美術館で開催されている『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』は、これまで見たことのない作品ばかりで、しかも思ったよりがたくさんあって見応えがありました。



 ピカソというと〝青の時代〟の暗く沈んだのもとかキュビズムの分解された人物というのがよく来日して、ずいぶん見たのですが、この展覧会ではその間の作品が多い印象を受けました。特にキュビズムの人物や静物がどこにどの部分が再構築されたのか、いつもわからない解けない謎だと思っていたのですが、フライヤーにも使われている人物画のようにまだ人体の構成がわかるのが何点もありました。確かにいきなりあのバラバラな作風になったわけではなく、段階があったのがよくわかりました。それを辿れる構成がとても良かったです。絵画だけでなく、ピカソのユニークな彫刻もありました。



 ユダヤ人だったハインツ・ベルクグリューンはナチス政権から逃れてアメリカに渡り、戦後パリで画商経営をしたそうですが、実際にピカソやクレー、マティスらと親交があったからこそこんなコレクションができたのでしょう。数ある作品からどれを選び、どれを手放すかはなかなかセンスが問われることだなと思いました。パウル・クレーとピカソの関係性を知ることができましたし、クレーの作品も一般的に浮かぶ彼の作品とは違う作品を見ることができましたし、マティスも同様にいろんな時期のがあり、またその時代ということでジャコメッティの彫刻も並んでいて、同時代にどんなアーティストが活躍していたのかがわかりました。そういえば彼を描いた映画『ジャコメッティ 最後の肖像』(2017)で、ジャコメッティ役をジェフリー・ラッシュ、友人の作家役を問題を起こしてどうやらハリウッドから姿を消したアーミー・ハマーが演じていて、とても観たかったのですが観損ねました。


 一応日時時間指定制ですが、以前より入場者制限が緩和されたのか結構入れていました。当日券も買える可能性が高いようです。


 特別展のチケットで入れる常設展も今回回ってみたのですが、見応えあって良かったので、時間があったらそちらもおすすめです。