以前ここギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で観た宇野亞喜良と歳が近く、東京イラストレーターズ・クラブを一緒に結成した横尾忠則の展覧会が『横尾忠則 銀座番外地 Tadanori Yokoo My Black Holes』(6/30)と銘打たれて開催中です。これまでも彼の展覧会が3回開催され、今回は1960~80年代に焦点を当てたものだそうです。



 横尾忠則と聞くと最初に〝画家宣言〟をした人というのがまず浮かびます。当時宣言して画家になるものなのかなと思ったものです。


 何をしているのかは対して認識せず、仲間の宇野亞喜良、山口はるみ、和田誠などイラストレーターやコピーライターなど時代の最先端として当時メディアに取り上げられるカタカナ職業の一人というくらいの認識でした。ファンというわけではなくともテレビや雑誌で目にするので、作品ではなく本人を認識していたという感じです。〝画家〟である以前のことはほとんど認識していなかったので、今回の展示で初めてグラフィックデザイナーとしての彼の活躍を見たわけです。


 もはや紙媒体の出版が少なくなっている今、会場には多くの若い人たちが来ていました。デザイン関係の仕事や勉強をしていそうな彼らの目にはきっと新鮮だったでしょう。版下とか色指定とか印刷するためにこれだけ手間や人手、制作過程が必要でした。イラストも作品によっては色を指定したりして完成させる場合最終的な作品は印刷物となるわけです。その過程で制作された原画にトレーシングペーパーを施し、上から指示が書き込んで印刷所に回して、刷り出された初版にまた指示を入れるので、重版がかかるような可能性がなければ大体破棄されるものなのにみんなとってあるというのがまるでこの間観た大田南畝のようです。しかも彼はポスターや本に雑誌などよくこんなにできたなと思うほど膨大な仕事を手掛けていました。なのにこれだけ展示できるほど残しているなんて横尾忠則は人のものでなく自分が関わったものを断捨離しない人ですね。



 ビデオ上映されていたのは1ページづつめくられていく1冊のスケッチブックで、彼の覚書というか断片だけ描き込まれたちょっと不思議なノートでした。それだけでなのにじっと見てしまう映像作品になっているのが、やはり凡人ではない気がしました。仕事の過程を紹介しているのにすでに現代アートに見えてしまうのもすごいなと思いました。


 それにしても膨大な資料から、これだけの展示にまとめたキュレーターの人もかなり非凡だなと思います。