少し前まで〝オタク〟と言えばネガティブなイメージをもたれていましたが、ここ数年は〝推し〟という言葉が日本中に散らばって〝オタク〟の世界もまわりに卑下せず宣言できるようで、何だかちょっと明るいイメージになった気がします。何を推すかによるかもですが。


 早稲田大学演劇博物館で開催された『推し活!展―エンパクコレクションからみる推し文化』は演劇に関してのですが〝推し活〟について解説されていました。なるほど昔から歌舞伎や相撲でもご贔屓さんや後援会という推し活があって成り立っていたわけですね。



 推し活に〝布教〟と言われる行動があって、好きな推しの存在で自分が感じる幸せをまわりにも味わってもらいたいと勧めるわけですが、最近問題になっている宗教と違って布教する側が時間や労力、場合によっては身銭を切って、「ちょっとよかったら観て」くらいの感じでしているのでとても平和なものです。先日行ったコンサートでは、個人で用意したgiveaway(手作りうちわ、キーホルダーやお菓子)をほとんど初対面のファンに配る人が多くてその熱量に驚かされました。これまで行ったコンサートではなかった文化ですが、歌舞伎では役者が手拭いを贔屓に配るというのがあったそうですし、好きを中心にした世界は推し活による経済効果は計り知れず、平和に経済が回るだろうなと考えながら展示をみてまわりました。


 この演劇博物館もずっと来てみたかった場所ですが、大学の敷地に入るというだけで恐れ多いというか一般人が入っていいのか思っていたのでなかなか踏み出せずにいました。場所はもちろん早稲田大学構内。南門からまっすぐ先に縦縞の建物が目に入ります。散々写真で見ていたのですが、思ったより大きな建物でした。昭和3年に建てられたそうですが、しっかりとしていて古びていませんでした。ただ、中に一歩足を踏み入れてみるとかなり軋む音がして、自然とそっと歩いてしまいます。使い込まれた木の部分が美しかったです。


 坪内逍遙の発案でエリザベス朝時代のイギリスの劇場「フォーチュン座」を模しているそうで正面に舞台があり、Totus Mundus Agit Histrionem(全世界は劇場なり)というラテン語が掲げられています。


 この建物を堪能できるだけでも楽しいのですが、敷地内には早稲田大学歴史館や會津八一記念博物館など常設や展示が変わるギャラリーなど見どころがたくさんあって、気がついたら歩き回ってくたびれてしまいましたが、ひと休みできるカフェもありました。また早稲田グッズの売店など、一般人でも利用できるところがいろいろあるのがわかりました。古い建物や銅像もある大隈庭園は、樹々に囲まれた芝生に入ってゆったりした気分を味わえたのがよかったです。


 今回チェックしていなくて入り損ねた〝村上春樹ライブラリー〟の階段本棚はいつか絶対見に行こうと思いました。