山口晃の作品はちょっとマンガ的(実際にマンガ雑誌でも掲載されている作品もある)なところがあるので、絵画を鑑賞するぞという構えがいらなくて、気軽に見れて楽しいなと思います。そんな山口作品を今ARTIZON MUSEUMで観ることができます。『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』。でも思っていたのとちょっと違っていました。



 まず最初は傾斜した部屋です。ここは感覚がおかしくなるから入らずに進むルートもありますと説明を受けました。よくあるトリックアートだと思うのですが、入ったことがないので挑戦しました。単に斜めなだけだと思っていたら、部屋が動いている気がするし、斜面を立っていられずに机につかまったり、壁に身体を押し当てていないと立っていられなくなってびっくりしました。あとで本人の解説もあったのですが、人間の脳は結構騙されてしまうのですね。この後しばらく気分が少し悪かったので、自信のない人はここはスルーしたほうがいいかもしれないです。


 で、気を取り直して進むと展示の順番がないので空いているところからでいいのですが、コマ割りのエッセイマンガ「すゞしろ日記」や、東京オリンピックに関心がなかったのにポスターを依頼され、描くまでの顛末などをイラスト入り文で延々説明するものなど、むしろ〝読む〟作品が多かったので、途中から見るわけにもいかず、その作品の最初から観るために順番待ちをすることになりました。展覧会では学芸員による解説文がいくつか作品横にありますが、本人が心情まで書き込んでいるというのはそうないし、興味深い内容でした。でも細かすぎてちょっと飛ばしました。


 山口作品といえば、近代のビルや電柱に瓦屋根があったりした時代が混在した不思議な風景画を思い浮かべます。そこを行き交う人々の格好もスーツの人の側を江戸時代の人がいたり、大きさもバラバラなのに成立している画面からはすぐに目を離すことができないので、みんなじっと立ち止まっています。それにしても複雑に入り組んでいて、どうやってここまで描けるのかと思いました。


 5階に行くと『創造の現場―映画と写真による芸術家の記録』の展示です。フライヤーを見たとき写真展かなと思っていましたが、ここの前進のブリジストン美術館のときに制作された芸術家の記録映画「美術映画シリーズ」と本人の作品を並べた展示でした。先日のホックニーも本人映像の解説がありましたが、かなり前の画家たちの姿がこうして残っていたとは思わなかったので面白かったです。4階にも〝ジャム・セッション〟している展示があるので、全部がんばってまわることをお勧めします。いずれも11/19まで。