マリー・ローランサンと言えば淡いぼんやりした作風が浮かびますが、以前はとくに好きではなかったのでわざわざ作品を見に行くということはありませんでした。でも23年春にBunkamuraザ・ミュージアムで観た『マリー・ローランサンとモード』で、タイトルにあるようにモードからの視点でローランサンとココ・シャネルとの関係性やその時代のアーティストたちとの交流などを知ってとても面白かったので、彼女の創作全体を観ることができる『マリー・ローランサン ―時代をうつす眼』(〜3/3、アーティゾン美術館)へ行ってきました。



 マリー・ローランサンの絵画の変遷や舞台関係の仕事などから改めてさまざまな面を知ることができました。ここのところ彼女が生きた時代(エコール・ド・パリ)の展覧会に行くうちにローランサンの作品にも目がいくようになっていたというのもありますが、彼女の特徴であるピンクとグレーの組み合わせが割と昔から好きだったことに気づいて、もしかしたらすでに彼女の影響を受けていたのかな?といまさらながら思いました。


 パリで絵を学び、当時台頭していたキュビスムに彼女の作品は入るというのが驚きでした。確かにキュビスムにもいろいろあって彼女のキュビスム作品の人物は、ピカソのように解体されていなかったのでそのカテゴリーという認識がなかったからです。


 ピカソや恋人だったアポリネールなど当時最先端のかなり個性的な芸術家たちの影響を受けながらも自分のスタイルを確立させて人気画家となり、戦争などの一人の人間としてはどうしようもない時代の流れの中で、今では誰もがマリー・ローランサンといえばあのピンクとグレーが印象に残る作品を多く残しました。晩年はよりカラフルになってはいきましたが、独自の作風を最期まで通していました。若い頃のアカデミックな自画像と後の時代のいわゆる彼女らしい色合いの作品を見比べることもできたのもよかったです。


 油絵以外に本などの挿絵も多く手掛けていて、女性であっても彼女やココ・シャネルのようにずいぶん精力的に活躍できていたのだなと思いました。もちろんジェンダーなどの大変な壁があったでしょうが。また彼女と関わりのあった日本人・堀口大学の訳で私でも冒頭の一行を知っているアポリネールの『ミラボー橋』がローランサンとの別離を謳ったものだったのを初めて知りました。上野の『キュビスム展』とは違うピカソなどの作品も鑑賞できます。


 最近「映像の世紀バタフライエフェクト」という番組で『パリは燃えているか』で映像で生きている狂乱の時代のローランサンたち芸術家の様子も観たので、またこの時代の面白い展覧会があればいいなと思いました。


 時間と体力があれば、他に『石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 野見山暁治』や常設展も観ることができきます。