古い建物好きにとって、はずせないのが旧岩崎邸庭園ですが、以前文京ふるさと歴史館の2022年企画展『コンドル博士と岩崎家四代―101年後の和魂と洋才―』で違った角度から旧岩崎邸庭園のことを知ることができました。
ジョサイア・コンドルといえば日本の西洋建築に大きく貢献した人物ですが、実は日本の庭園を深く研究していて、その成果を著した大判の本も展示されていました。また岩崎家との関わりも紹介されていて、とても興味深いもの展示でした。旧岩崎邸庭園は岩崎彌太郎の長男の久彌が建てたのですが、当時は今より広大だった庭園で行われた野外パーティーの見取り図には、あちこちに「ビール」「スシ」と書かれていたので散策しながら楽しめるように屋台があったのでしょう。
いったいどれだけ人々が集ったのか想像するだけで楽しかったです。コンドルは建物の設計だけでなく日本庭園や華道、日本舞踊など文化にも造詣が深かかったそうです。
さて、その旧岩崎邸庭園は上野恩賜公園から歩いてすぐのところにあります。でも建物は少し高台で塀と樹々で囲まれた広い敷地の中央にあるため、ちょっと存在に気づきにくいようです。都内在住の友人も行ったことがないというので一番近い銀座線の上野広小路駅で下車して行ってみました。チケット売場で400円の入場券を購入して、広くてカーブしたなだらかな坂道をあがって、門柱を通るといきなりイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」の世界だ!とわかる人にはわかる光景が視界に入ってきます。初めて見たときは一瞬あのLPレコードのジャケット写真はここか?と思ってしまったほどです。何のことかさっぱりわからなくても今ならすぐに画像検索で見れますね。便利な時代です。それにしてもなぜあそこにヤシの木があるのでしょう?ところで、広いエントランスは昔の移動の最上手段が馬車だったからです。今は皆平等に歩かなくてはいけません。
靴を入れる袋を受け取って中へ。どこを見ても凝っていてなかなか前に進めません。2階のバルコニーから望む庭は今はずいぶん狭いのですが、脳内再生で当時の野外パーティーを楽しむことはできます。この西洋館から日本家屋へ行けるのですが、やはり畳の部屋の方が生活の基準としてあったわけで、この手の西洋建築にはたいてい日本間がありますね。
ここの敷地にもうひとつあるのが撞球室という山小屋風の建物です。これだけで普通の一軒家くらいの大きさです。面白いのは母屋の建物とここが地下道でつながっているというところです。当時は使用人が人目につかないようにそこを使っていたそうです。ちょっと秘密基地っぽいですね。
敷地の一角には国立近現代建築資料館があり、何か展示されていればそちらを見学することもできます。