以前は名前を聞いたことがあっても、日本橋本町で働くようになるまで、まず行くことのなかったべったら市。場所だけでなく、その漬物があまり好きではないのもありますが、よく見たら開催日が引っかかっていたようです。


 祭とか花火大会とかのイベントはたいてい、土日祝日にかけて行われると思い込んでいたのですが、この市は日付優先でした。


 初めて連れて行ってもらったとき、「平日にある市なのか」くらいにしか思っていなかったのですが、なぜ休日ではないのかという疑問はそのときは浮かびませんでした。ランチ代わりに焼きそばや焼き鳥を買って、会社に戻って皆で食べるというのを何度かやりましたが、ある年、土日にかかっていたことがあって、ようやく日付固定の市だったことに気づきました。


 この市は、当然べったらの店がいくつも出店しているわけですが、大半はいわゆる縁日の屋台です。テーブル席も何ヵ所か設けられていて、平日昼間でもビールにおつまみという人はいます。べったらを大量購入した人のために郵便局の出張所もあります。


 場所は小伝馬町近くの宝田恵比寿神社のあるゑびす通りを中心にした路地で、普段は飲食店もほとんどないオフィスビル街で、そこに開催日の2週間くらい前から提灯が設置され始めます。19日には神輿が練り歩き、20日は盆踊りもあるようですが、残念ながらまだ遭遇していません。2日間12時から21時まで、とても賑やかな異空間になるわけです。



 私が楽しみにしているのが、老舗の江戸屋と明治屋の出店です。江戸屋さんはさまざまなブラシ類を扱う古い佇まいの店なのですが、雰囲気に負けて入りづらいのが、この日は客も多いので気軽に入れますし、明治屋もジャム好きにとっては嬉しいです。それにどちらもお祭りということで特売品が出るので見逃せません。多少重くてもジャムは2瓶必ず買います。


 通常人通りもほとんどなく静かなビルの間が、このときだけは、江戸時代には多くの商店に人々の往来があったのだろうとちょっと昔の雰囲気を思い起こさせてくれます。