目黒は高低差のある街で、その地形を駆使して建てられたホテル雅叙園にある東京都指定有形文化財「百段階段」は1935年の木造建築で〝昭和の竜宮城〟と呼ばれていたそうですが確かに派手です。



 2007年に古い建物好きのグループでこの「百段階段」の見学と希望のコース料理つきの『美と匠の祭典』というイベントに参加したことがあるのですが、本館はバブル期に館内改築したというだけあって、あちこちに絵画や彫刻、螺鈿細工やらが施されたちょっとしたアミューズメントパークで、もうこのフロアは閉めますと言われるまで皆で散策をしました。



 中でも有名なのがトイレです。もちろん女性用にしか入ったことはないので、男性用も同じ造りかはわかりませんが、予想外の広さです。何しろ川があって橋を渡らないと個室にいけないので、数が少なく長蛇の列になってしまい、結局大方の人は別の場所の普通のトイレに行くことになります。


 さて、目玉の「百段階段」は99段の階段を上がって、7つの趣の異なる部屋に入ってじっくり見学しました。それぞれ格天井や床の間に欄間が大層豪華で、思わず歓声をあげてしまいましたが、私が一番気に入ったのは〝組子〟です。ここで初めて「麻の葉」以外の組子模様がこんなにあるのを知りましたが、ちょっと破損している箇所に気がついて、「宴会場の方があれだけ綺麗なのにここには放置されているのは、きっと修繕できる人が少なくなっているのだろう」とそんな考えがよぎったのを覚えています。今では補修されていると思います。



 組子は近年世界的に注目を浴びている日本伝統の木工技術で、ザ・リッツ・カールトン東京スイートルームに素晴らしい作品があって、残念ながら実際に目にする機会はないでしょうが、テレビの紹介で見ただけでもその美しさは十分伝わりました。あそこまで凝ってはいませんが、目黒の組子や建具はとても素敵です。


 百段階段では年間を通して、生け花やひな祭りなどのイベントを開催しているので、階段を上がれるうちにぜひ一度は行かれてみてはいかがでしょう。


 現在10月11日(日)まで『TAGBOAT×百段階段展~文化財と出会う現代アート~』という企画が開催されています。