稽古不足か? 大の里には良薬
その大の里は、前半を4勝1敗でまずまずだったが、6日目に先場所負けた若隆景(前頭2枚目)との1番を落とした。それでも7勝2敗と我慢して終盤に差し掛かかった10日目、関脇大栄翔に上手く取られて3敗目を喫した。立ち合い一気に押し込んで大関の楽勝かと思われたが、大栄翔が堪えて頭を付け、左下手を取って大関の腰を浮かせた。大の里は腰高になったうえに得意の右手が使えず、ズルズルと後退した。
<10日目/大の里-大栄翔>
場所前に感染症に罹って稽古不足が伝えられた。新大関とあって祝賀行事が重なり、稽古不足になるのは仕方ない。昇進した者が等しく通る道である。出世のスピードと地力の付く速度が一致しなかったのは明らか。普段から稽古量が足りない、親方の指導が甘いなどという蔭口も聞こえてくる。それが事実、と思わせるほど今場所は脆かった。
引き出しの少なさを指摘する解説者が多い。立ち合いのぶちかましから素早く一気に寄り切るのがこの人の真骨頂。窮地に陥った際に繰り出す技は少ない。大柄な体にモノを言わせた圧倒的な押しの迫力でここまで駆け上がってきた。大銀杏も結えない若手力士だ。焦ることはない。来年1年かけて横綱に相応しい技量を身に付ければいい。
クセ者と元気者の3番相撲
11日目、珍事が起きた。クセ者宇良(前頭2枚目)と元気者平戸海(前頭筆頭)は、本割で互いに突っ張り合い、土俵際で同時に体が外に出た。案の定、取り直し。ここまではよくあるパターンだ。取り直しの1番は宇良が立ち合いよく踏み込み、平戸海を押し込んだが頭が下がりすぎて叩かれた。しかし、そこは転んでもタダでは起きない宇良。土俵際で押し返した後は行司の軍配を覗く太々しさを見せた。しかし、これまた同体と判断されて2度目の取り直し。最後は息の切れた平戸海に気力は残っておらず、宇良の押し倒しに敗れた。